なぜ整形外科・整骨院・整体院に通っても痛みが治らないことがあるのか
「何か月も通っているのに、また腰が痛くなる」
「施術を受けた直後は楽なのに、翌日には戻っている」
こんな状態が続くと、「ここでは治らないのかな」「別の治療を探した方がいいのかな」と迷うと思います。
時間もお金もかけているのに、思うように変わらない。先が見えないのは、つらいことです。
ただ、そこで考えたいのは、通院先を変えることだけではありません。
今、何に対して治療をしているのか。何が変わり、何が変わっていないのか。
この記事では、腰痛などの身近な痛みを例に、改善を感じにくいときに見直したい視点をお伝えします。

大切なのは「何をしてもらうか」と「何を見ているか」
痛みが続く理由は、一つとは限りません。
患部の状態に応じた対応が必要なこともあれば、仕事や運動でかかる負担、治療の目標などを整理する必要があることもあります。
そのため、「どこに通っているか」に加えて、「何を評価し、どのような変化を目指しているか」を確認することが大切だと私は考えています。
もちろん、適切な対応を受けていても、すぐに改善するとは限りません。痛みが長引いているという結果だけで、治療が間違っているとも、ご本人に問題があるとも決められません。
1.その場で楽になることと、生活で困らなくなることには違いがある
痛みが和らぐことには、意味があります。
つらさが軽くなり、休みやすくなったり、必要な動作に取り組みやすくなったりすることは、大切な変化です。
一方で、施術の前後だけを比べていると、普段の生活でどう変わっているかが分かりにくくなります。
例えば、腰が楽になっても、仕事で長く座ると再びつらくなる場合。
そのときは「施術が効かなかった」とだけ考えるのではなく、座れる時間に変化があるか、途中で姿勢を変えられるか、仕事量が増えていないか、といった点も確認したいところです。
これは「座り方が悪いから治らない」という意味ではありません。治療で起きた変化と、生活の中で残っている困りごとを、分けて見てみるということです。
WHOも、特定の病気などによるものではない慢性腰痛について、一人ひとりの状況に合わせ、教育や運動など複数の対応を組み合わせる考え方を示しています。すべての痛みに同じ方法が当てはまるわけではありませんが、一つの手段だけで考えないことは参考になります。WHO:慢性腰痛のガイドライン解説
2.痛い場所だけでは、分からないことがある

私は柔道整復師として20年以上、臨床に携わってきました。千代整骨院で大切にしているのは、痛い場所を確認したうえで、その場所に負担がかかる背景にも目を向けることです。
大きく分けると、次の二つです。
- 患部の状態:ケガのきっかけ、腫れ、痛みの出方などから、損傷や炎症の可能性、医療機関での評価が必要かを考える。
- 動きと負担のかかり方:関節の動き、体の使い方、仕事、運動量、靴、セルフケアなどを確認する。
例えば腰が痛い方なら、腰の状態に加えて、立つ・座る・かがむといった動作や、仕事中につらくなる場面を確認します。必要に応じて、股関節など周囲の動きも見ます。
ただし、股関節が硬いからといって、それだけで腰痛の原因だとは決めません。
「骨盤の歪みがすべての原因」とも考えません。
見つかった特徴が、その人の症状や困っている動作とどう関係するか。そこまで考えることが大切だと思っています。
この二つは、私が臨床で大切にしている観察の軸です。痛みの仕組みをすべて説明する分類ではありません。
国際疼痛学会は、痛みには身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要因も影響するとしています。不安や生活上の事情にも目を向けるのは、痛みを「気のせい」と片づけるためではなく、その人が困っている状況を理解するためです。IASP:痛みの定義
3.「何をもって改善とするか」が曖昧になっている
「まだ痛いですか?」
「はい、まだ痛いです」
これだけでは、経過を十分に共有できないことがあります。
例えば、以前は10分でつらくなっていた買い物が、今は20分できる。痛みは残っていても、夜に起きる回数は減っている。
こうした変化も、治療の方針を考えるための情報になります。反対に、痛みは少し軽くなっていても、歩ける距離が短くなっているなら、そのことも伝えてほしいのです。
私なら、痛みの強さに加えて、「その人が何に困っていて、何をできるようになりたいか」を目標にしたいと考えます。
仕事を終えた後も家事ができることなのか。子どもを抱き上げることなのか。安心してランニングを再開することなのか。
目標が具体的になると、今の対応を続けるか、調整するかを話し合いやすくなります。通院の回数を増やすこと自体が、目標ではありません。
「強い施術なら治る」「病院は検査だけ」という思い込みにも注意
改善を感じられないと、もっと強い刺激や、別の施術名に期待したくなるかもしれません。
ただ、私は施術の強さや名前より、「何のために行い、どう変化を確認するか」を大切にしたいと考えています。
また、整形外科は検査や薬だけを扱う場所ではありません。骨・関節・筋肉・神経などの診断を行い、状態に応じてリハビリテーションなども含めた治療を行います。日本整形外科学会:よくある質問
整形外科・整骨院・整体院は、資格や対応できる範囲が同じではありません。それぞれの役割を踏まえたうえで、今の状態に必要な評価や対応を受けられているかを考えることが大切です。
「どこが一番優れているか」という比較だけでは、自分に必要なことが見えにくくなります。
自分で見直すなら、まず三つだけ

最初から生活をすべて変えようとしなくて大丈夫です。次の三つを、簡単なメモにしてみてください。
① どんな場面でつらくなるか
「夕方になると」だけでなく、「午後の座り仕事が続いた後」「走る距離を増やした翌日」など、思い出せる範囲で十分です。
② 施術後から次の日まで、何が変わるか
楽な時間がどれくらい続くか。できる動作が増えるか。反対につらさが増すか。その場の感想と、その後の経過を両方伝えます。
③ 自分は何ができるようになりたいか
「痛みをなくしたい」に加えて、「30分歩いて買い物をしたい」など、生活の目標を一つ挙げてみてください。
そのうえで、担当者に次のように聞いてみるのもよいと思います。
- 今の対応は、何を改善するために行っていますか?
- 家では何を控えて、何を続けるとよいですか?
- どんな変化を目安に、いつ方針を見直しますか?
今の治療を否定するための質問ではありません。自分の体と、治療の進め方を理解するための質問です。
症状が変わったときは、通院中でも相談を
腰痛に伴って新たに尿が出にくい、尿や便を漏らす、股の間の感覚が鈍い、両脚にしびれや力の入りにくさが出る場合は、救急受診が必要です。
発熱や強い体調不良を伴う痛み、急速に悪化する強い痛みも、早急に医療機関へ相談してください。NHS:腰痛の受診目安
こうした変化がなくても、改善が乏しい状態が続くときは、「もう少し通えば」と我慢を重ねず、現在の担当者や医師に経過を伝え、再評価について相談しましょう。
痛みの場所と、痛みが続く背景を見直してみる
痛みが続くと、「自分に合う施術は何だろう」と考えがちです。
そこにもう一つ、「今の体の状態と、普段の負担はどうなっているだろう」という視点を加えてみてください。
患部を確認すること。生活の中で困る場面を知ること。変化を振り返り、必要なら方針を見直すこと。
私は、この積み重ねを大切にしています。
「痛みには理由がある。治らないのにも理由がある。」
それは、必ず一つの原因が見つかるという意味ではありません。すぐに良くならない自分を責める言葉でもありません。
痛い場所だけで結論を出さず、その背景まで一緒に考えていく。
まずは、痛みが出る場面と、できるようになりたいことを一つずつ整理してみてください。

