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痛い場所だけ治療しても痛みを繰り返す理由

abetaka.official

「腰が痛いのに、どうして股関節の動きまで見るんですか?」

痛い場所とは別のところを確認されると、最初は不思議に感じるかもしれません。

腰が痛ければ腰を、膝が痛ければ膝を何とかしてほしい。それは自然な気持ちですし、患部をきちんと確認することは大前提です。

ただ、同じ場所の痛みを繰り返しているときは、もう一つ考えたいことがあります。

その場所に、どんな場面で、どれくらいの負担がかかっているのか。

今回は、痛い場所と日常の動作を一緒に見る理由を、身近な場面からお伝えします。

患部を楽にすることに加えて、負担がかかる場面も見る

例えば、重い荷物を運ぶたびに腰がつらくなるとします。

腰の状態に合わせた治療を受けることは大切です。そのうえで、毎日の荷物の重さや持ち上げる回数、作業する高さなども確認できれば、対応を考える材料が増えます。

「毎回この姿勢になるから悪い」と決めつけるのではありません。

荷物を小分けにする余地はあるか。台車を使えるか。休憩や作業の交代はできるか。体に何をするかと、体に何がかかっているかを、一緒に考えるということです。

WHOの腰痛に関する情報でも、原因となる特定の病気などを確認したうえで、状態に応じた運動や、仕事中の負担の調整などを扱っています。患部への対応だけでなく、生活で動けるようになるための支援も含まれます。WHO:腰痛について

もちろん、痛みを繰り返す理由がすべて日常の負担にあるわけではありません。ここでは、見直す視点の一つとして考えてください。

同じ「腰が痛い」でも、確認したいことは違う

ここからは、実際の患者さんの症例ではなく、考え方を説明するための例です。

荷物を持ち上げるときにつらい人

私は、どこが痛むかに加えて、どの高さから持ち上げるのか、荷物の重さや回数はどうか、といったことを確認したいと考えます。

動作を見るときは、腰だけでなく、股関節や膝の使い方も観察します。

ただし、「膝を曲げれば全員解決する」といった一つの正解に当てはめるわけではありません。その人の体の状態と、実際の作業に合う方法を探します。

座って仕事をしているとつらい人

この場合は、座っている時間、姿勢を変えられる頻度、机や椅子の使い方などを確認します。

「背筋を伸ばしていれば大丈夫」と、姿勢の形だけで判断することはしません。

私は、姿勢を変える余地があるか、つらさが増す前に作業を区切れるかなど、仕事の中で試せる工夫も一緒に考えたいと思っています。

ランニングの距離を増やしてからつらい人

走るフォームだけでなく、最近の距離や速さ、坂道の量、休養日、靴の変更などを確認します。

同じフォームで走っていても、取り組んでいる練習の内容は変わっているかもしれません。

まずは「どこが悪いのか」を探す前に、痛みが出始めた頃、何が変わったのかを整理します。

この三つは、同じ腰痛でも、確認する生活場面が違うという例です。ここから原因を確定したり、治療法を決めたりできるわけではありません。

股関節が硬ければ、それが原因なのか?

腰が痛い方の股関節を見て、動きにくさが見つかったとします。

そこで「原因は股関節です」と言い切ってしまうのは、話が早すぎると私は考えます。

確認したいのは、その動きにくさが、本人の困っている動作とどう関係しているかです。

例えば、かがむ動きがつらいなら、腰と股関節がどう動いているかを見ます。無理のない範囲で動き方を変えたときに、つらさや動きやすさがどう変化するかも、一つの参考にします。

ただ、その場で楽になったからといって、「股関節だけが原因だった」と証明されたわけではありません。その後の生活でも変化が続くかを確認する必要があります。

気になる特徴を見つけることと、痛みの原因を決めることは、同じではない。

これは、体を広く見るときほど大切にしたい視点です。

「本当の原因は別の場所にある」とも限らない

ここまで読むと、「痛い場所には原因がないのか」と思うかもしれません。

そういう意味ではありません。

患部にケガや病気があれば、その状態に合う対応が必要です。痛い場所への治療を省いて、別の場所だけを整えればよい、という話でもありません。

また、痛みをすべて「体の使い方」や「歪み」で説明することもできません。国際疼痛学会は、痛みには身体的な要因に加え、心理的・社会的な要因も影響するとしています。IASP:痛みの定義

だからこそ、「あなたの姿勢が悪い」「動き方が間違っている」と本人の責任にするのではなく、困っている状況を広く知る必要があります。

仕事も家事も、簡単には減らせません。理想的な生活に変えられないことを前提に、何なら調整できるかを考える。それも大切な対応だと思っています。

私が臨床で大切にしている二つの視点

私は柔道整復師として20年以上、臨床に携わる中で、次の二つを一緒に見ることを大切にしています。

一つは、患部の状態。

いつから、どんなきっかけで痛むのか。腫れや動きの制限はあるか。損傷や炎症の可能性を考え、医療機関での評価が必要な兆候がないかを確認します。

もう一つは、そこにかかる負担。

どんな動作で困るのか。仕事や運動の量はどうか。靴や道具、セルフケアで見直せることはあるか。

「腰が痛いから、腰に何をしようか」だけで終わらず、「腰がつらくなる場面に、何があるのだろう」と考えます。

そして、確認したことが対応にどうつながるのかを、本人にも分かる言葉で伝えたいと思っています。

体のあちこちを見ること自体が目的ではありません。今の困りごとを減らすために、必要なところを確認するのです。

自分で見直すなら、動作の「形」より「条件」から

自分の姿勢やフォームを細かく分析するのは難しいものです。まずは、次の三つを振り返ってみてください。

  • :仕事や運動の時間、重さ、回数が最近増えていないか。
  • 続け方:同じ作業が長く続いていないか。途中で動きや作業を変えられるか。
  • 変わったもの:靴、椅子、机、仕事内容、練習場所などに変化がなかったか。

思い当たることがあっても、それだけで原因だと決めなくて大丈夫です。次の相談で伝える材料になります。

試せる工夫があるなら、例えば荷物を小分けにする、座り仕事の途中で無理なく姿勢を変えるなど、取り入れやすいことを一つ選びます。

その後、作業中だけでなく、終わった後や翌日のつらさも振り返ってみてください。悪化する工夫を無理に続ける必要はありません。

医師などから活動の制限を受けている場合は、その指示を優先し、再開の範囲を相談してください。

動き方の問題と決めず、受診したい変化

腰痛とともに新たに尿が出にくい、尿や便を漏らす、股の間の感覚が鈍い、両脚にしびれや力の入りにくさが出る場合は、救急受診が必要です。

発熱や強い体調不良を伴う痛み、急速に悪化する強い痛みも、早急に医療機関へ相談してください。NHS:腰痛の受診目安

痛い場所から、生活の中へ視野を広げる

痛い場所を確認し、必要な対応をする。そのうえで、そこに負担がかかる動作や生活も見る。

同じ場所の痛みを繰り返すときは、この両方を考えてみてください。

「自分の体の使い方は全部間違っているのか」と、不安になる必要はありません。

まずは、痛みが出る動作について、重さ・回数・時間などの条件を一つ振り返る。

そこから、患部への治療と日常の工夫をつなげていくことができます。


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